食べないの? おおかみさん。
」のレビュー

食べないの? おおかみさん。

小石川あお

絵本のように読むお話

ネタバレ
2022年1月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●ファンタジーBLは普段あまり読まないのですが、人気作でオススメされるかたも多いので拝読してみました。
●幼い頃、家族に「怪物への生け贄」として森に捨てられた太郎。狼男のウルに食べてもらえる=存在を必要としてもらえると思って、食べられる日を待ちわびている。でも本当は、「生け贄」というのは「嫁ぐ」ということで、つまり人ならざるものの世界で生きていくということ。ウルはそれを受け入れず、太郎を人間の世界に返そうとしている。お互いを想うがゆえのすれ違いが切ない。
●「食べてほしい」「食べたい」っていう言葉が、いつからか「愛してる」と同じ意味に読めてしまうんです。直接的なBLの描写はないのに、お互い欲しがってるようでエロティックですらあります。
●姿の見えないウルに向かって、食べられてもいい(=抱かれてもいい)、だからずっと一緒にいてよと訴える太郎と、木の陰に隠れて歯を食いしばり、涙を流して「お前なんか愛してない」と声を絞り出すウルとの場面…胸が締め付けられます。そして結局ウルは、太郎を人里にやってしまうのですね。
●この、離れていた期間をもう少し掘り下げてほしかった気がします。(太郎は最初からいずれ森に戻るつもりだったのでしょうか。)その期間はウルにとってはどれくらいの時間だったのかな…とか。読んでみたかった。
●空想世界の住人がリアルに溶け込むエンディングはよく見るような気がしますが、こちらの作品はぐいっとファンタジーに寄せた結末で、絵柄や言葉の紡ぎ方と相まって、絵本のようだな…と感じました。「そして二人は緩やかな時の流れの中で幸せに暮らしたのでした。おしまい。」のような。
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