いつも隣に俺がいた
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いつも隣に俺がいた

綺月陣/周防佑未

『多く愛した方が負け』許すしかない

ネタバレ
2022年1月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 賛否両論あるようですが、私は(考えさせられるという点で)良かったと思います。BLって、どうしてもファンタジーの域を出ないと思うんです。その中で作者と読者の双方が、暗黙の了解で微妙なバランスを保ちながら楽しんでいる気がします。あまり現実的に見せてしまうと引かれてしまう事が多いと思うので、ハピエンの後の少しの未来を見せて希望を持たせながら終わる…という作品が多いし好まれるのかなと。でも作者さんは、BLを現実世界に近づけて表現したのだと思います。作内でも後書きでも世界的な世相について書いていらっしゃいますし。そういう観点で見ると、二人が50歳になった時を描いて、変わらず思い合う姿を見れて良かったと思います。子供については…さすがにちょっと無理矢理な感じがしましたが、それでも私は『あり』です。普通に考えたら、一般的な夫婦だってラブラブだけの平坦な20年なんてないだろうし、男同士なら尚更。作者さんは、どこまでも現実的に書かれたのだなと思います。だからって真崎を許すとかではなく、倫章が可哀想と思わないわけでもないです。よく言いますよね「多く愛した方が負け」なんだって。要するに多く愛した方が『許す』しかない…って事だと思います。真崎は執着が凄いけど、愛が深いかって聞かれたら違う気がします。その点倫章の愛は深いし広いと思います。だから倫章が許すしかないんですよね…辛いけど。作者さんが本当に表現したかった内容とは違うかもしれませんけど、私はそのように受け止めました。あと個人的に真崎父子のやり取りが刺さりました。私の予想以上の背景があって、シリーズ通して初めて涙しました。
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