【電子限定】翼なき彼ら
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【電子限定】翼なき彼ら

西田ヒガシ

When you wish upon the Wings.

ネタバレ
2022年1月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★何でも屋・木田×建設会社リーマン・睦の哀しき男の物語。
★25年振りのふるさと。立ち寄るつもりなどなかった場所で、木田は幼い頃に数年一緒に過ごした睦と再会する。可愛かった面影が見当たらない睦の背中にあるものに、木田は驚きを隠せない…。
★「律儀な羽だな」と思いました。睦が死にかけているのを察知して、「あの子の願いを叶えてないぞ」と睦の体に入り込んで生かし、願いを叶えようとした…けれど、睦の心には、子どもと初恋の木田の姿があったのでしょうね。…勝手な推察です。羽の力で再会した2人が、心の奥深くに隠していた願い(自分)と向き合う姿は、とても複雑でままならない。「願う」とは「選ぶ」ということにもなるんですね。得るために捨てなければならないものがある。睦は子どもを愛し、ゲイである自分に蓋をした。木田は自分を守って、子を葬った。そのことは、ずっと彼らの中でくすぶっていた…。睦は子どもを救うために木田の元にやって来ますが…彼は翼のない体でその身を投げ出しているんですよね。賭けだったのかな、と思いました。木田の言葉を胸に「(翼が現れれば)生きていける」と思ったのか、「(翼が出ないまま落ちて)死んでもいい」と思ったのかは分からないのですけれど、睦は選べなかったんじゃないかな。子どもも木田も、愛する2人とも生かしたかったんじゃないかな、と考えたりもしました。木田の願いに対する羽の答えが切なく響くとき、木田は何を思ったのかな…とか、彼らの行動や言葉を繋いで、色々思いを巡らせることは、不確かでありながら、面白かったです。(面白い以外にしっくりくる言葉がある気がするけど思いつかないな…)
★表題作のみ195ページ。羽に導かれた彼らのラストは、清々しさを感じました。2人の物語はこれからですね。
★「目は…」「ヒゲは…」…ここ、すごく好き。
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