このレビューはネタバレを含みます▼
不老不死の体になって死にたいと思っている男とそんな男に寄り添い死ぬ方法を探す男の物語です。
題材が題材なのでずっと張り詰めた空気が漂っていて、読みながら何度も重苦しいと感じました。
明るく幸せな部分はあまりなく、正直ずっと辛いです。しかしその緊迫感がこの物語には合っていて、抑えたトーンの静かな筆致の中に言い知れない悲しみ過酷さが滲み出ていてものすごく引き込まれました。
ずっと胸がザワザワしながらも彼らがどこへ行き着くのかが気になって、一気読みしてしまいました。
できればラストは「良かった」と思って終わりたかったです。司波の置かれた状況があまりにも辛すぎて、解放してあげて欲しかったというのが正直な気持ちです。すっきりは出来なかった。これでは司波ばかり負担が重過ぎないかと思ってしまいました。
しかし決して嫌な読後感でもありませんでした。唯一無二の存在を信じて求めて生き続ける司波がこの上なく幸せそうであるから、悲しくもあるが崇高な気持ちにもなりました。
この作品は一言では言い表せない不思議な余韻を残してくれました。しばらく司波に思いを馳せてしまいそうです。