黒伯爵は星を愛でる
」のレビュー

黒伯爵は星を愛でる

音久無

vs.吸血鬼でなく、with 吸血鬼側面重視

ネタバレ
2022年2月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 愛される、それも溺愛されるのが好み、という人なら気に入る話かも。

絵は巻を追って美しくなり、彼の甘い台詞連発も、糖度慣れしたかの(ベースが違うが)主人公のつれなさが初期の本作のお定まりパターン。そういう酔い方は出来た。

英国貴族社会の描写も研究の跡が窺えて雰囲気作りが成功していると思う。

帯や粗筋解説等に踊る「シンデレラストーリー」の語、そうとも言えるが、私には「マイ・フェア・レディ」っぽさの感覚の方がずっと近かった。

主人公エスターのピンチにレオンが現れるのは長丁場のストーリーではそうそう何回もやれない。自信の足りないエスターの、レオンの愛情表現に鈍感すぎ設定も多すぎると疲れる。卑屈が過ぎて面倒臭い。
けじめ無くダラダラ二人の生活続くのも、そろそろ次のステップが欲しくなる。
といった状況からの、一種の打開策、あの展開があまりに古典的手法、更に再三再四そのときどきの「敵」に捉えられる「ピンチ」のスタイルも、ヒーロー仕立ての型に結構ありがち。
自信無し→堂々の志願、この転換は、説得力不足と感じた。

長編にありがちな、「敵」として登場してから味方への転身、というのも目に余った。敵時代の主人公達サイドへの危険で挑発的言動からの、安直な節操知らずの変わり身の速さは、ストーリー上の強引さに通じる感があった。

アルがストーリー全体を縦軸として貫く存在であるはずが、不自然さも多くクライマックスに至っては回収の為の助走期間急造の要素に唐突感が拭えなかった。
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