トリガー
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トリガー

イシノアヤ

裸の王様にされた男の再生…と思いました。

ネタバレ
2022年2月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★元高校の同級生・曽根と三井の再会再生物語。(2/14まで50%オフクーポン対象作品色々ですね)

★離婚を機に引っ越した先で曽根に再会した三井。曽根は高校生の頃、三井に「好きだ」と告白してきた男だった。三井は曽根を否定し、嫌悪した。自分の根幹を隠して…。

★人間の残虐性の底の無さを、思い知らされます。ずっと自分を偽り、理想とする良識的な人間、仕事のできる男、良き夫・父親を演じてきた三井は、その成功した世界で王様でした。努力して自分を認めてもらうことで、虚構の自分を保っていたのですね…。それなのに、妻の一言により虚構の城から放り出され、その先で再会した曽根。苛立ちと憂さを晴らす恰好の獲物でした。三井のしたことを思えば、曽根のことは理解が難しい、と正直思います。慈悲深い?愛?…そういう言葉ではしっくりこなくて、何とも形容し難い人。他の方が書かれていますが、DV被害者の心理を思うと、複雑な気持ちが残ります。でも、曽根は実は強い。裸の王様のように生きてきた三井も、本当の意味で丸裸にされましたし、きっと彼らの未来は明るいですね。

★表題作のみ178ページ。三井の中学生時代の話を『ビューティフル サンデー』としたのが、重いです。彼が生き方を決めた日ですね。三井が息を吹き返したように、エピローグの曽根の一言を必要としている人が、世にはどれほどいるのでしょうね…。

★最初に読んだのが、ほこほこする『椿』シリーズ、『カントリー・ダイアリー』シリーズでしたので、こちらを読んだときは衝撃でした。多才(多彩)な作者様ですよね。とても好きです。
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