例えば雨が降ったなら
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例えば雨が降ったなら

カサイウカ

這ってでも捨てなかった恋。

2022年2月14日
初恋から続く久我と充の、愛の物語です。
少年期の甘づっぱい炭酸飲料のような恋や、40才位までのカフェオレ、シャンパン、高級ウィスキーのようなお洒落でご満悦な恋愛模様のBL物も良いものですが、この濃い~ぃ渋茶のような久我と充の悔恨たっぷりの、山越え谷越え魂すり減らしてたどり着いた、情けなくも味わい深いおっさんBLも、なかなかに乙なものでした。
かっての美少年と有能なサラリーマンであれば、「美中年」「オジサマ」の称号でしょうが、この二人に無意味な飾り文句は無用。たとえ世間様が人生の負者と定めようと、決して哀れな中年男にはなり得ない二人。
だって、しなだれた年になろうと、若い頃からの純愛を枯らさなかったのですもの。
美しい男イコールBLが法則のような夢世界で、ヨレヨレ姿の無精髭。どう転んだとて格好良さなどゼロ~。なんですが、泥水被った二人の生き様は、何だか清々しくって高潔。中年以上の腐女子の方なれば、きっと味わい深い話と受け入れるでしょうね。だって、その年になれば虚栄や欲が人生において滑稽だって分かってくるから。
シルバーアクセサリーが変色しても、どこか捨てられない愛おしさ。そんな二人の物語でした。
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