溺れる淫情 ‐孤高なセレブの執愛‐【特典付き】【イラスト入り】
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溺れる淫情 ‐孤高なセレブの執愛‐【特典付き】【イラスト入り】

高月紅葉/石田惠美

ロマンスのスタンダードを

2022年2月19日
限りなくゴージャスにアレンジメントした快作で頭の中はずっと角松敏生とか山本達彦がキラキラしていました……計算され尽くしたプロの手管です。

私カシコの人が恋愛であほになるのがいちばん好きなシチュエーションなのですがこれにしごできとかかねもちとか盛られるとプライドを守る鎧はなんぼあってもいいですからねと鼻息が荒くなります。

今作の攻め柏木君はザ・持てる者、持たされすぎて周囲の居心地を悪くさせ排除までされてしまいもうなんも要りませんてとこまで流れてしまう。
モラトリアムどころか完全にリタイア気取りの27歳がやくざの情婦に手を出し追われているところの受けにロックオンされさあ大変、という導入。

お互いが本当にお互いをよく見ていて、拝島の柏木評、描写には惚れ惚れしてしまう。また著者が余計な感情を乗せず彼らの見たまま、ありのままを描写するので臭みやいやらしさがない。

リゾート地の夜の社交が物語の重要な背景なので女性もいっぱい出てくるのですが、この筆致のお陰でさっぱりと彼女たちを見送れます。
マダムは著者の特観席枠ですね。帯封がいい仕事すんですよこの話…。

ジゴロと厭世家がペットと飼い主になり、友人のような相棒のような、からのハッピーエンディングは読み応えがあります。掌編も2本ありいつまでも物語を去り難くさせてくれます。
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