このレビューはネタバレを含みます▼
204ページ。
随所でぞわっとする怪談系。雰囲気は良い。エロは無い方が好み。
魂を奪われないための仮の名、仮であるために不安定な魂、そのせいで他人からは別の誰かと重ねられてしまって真の自分がどこにいるのかがわからない。魂のイメージを蝶で表現しているのがキレイな中に一抹の不気味さを感じさせます。
最終的に平子くんが「自分」を手に入れられて良かった。
メインの話とは別に、大人カップルの話もなかなかの読み応え。大切だった人の歯から何か錬成しようと試みる話も切なくて良かった……けどこちらはオチで台無し(個人の趣味的に)。
全体的にはけっこう好みなので、別の作品にも手を出そうかと思う作家さんでした。
漫画の演出上引っかかった点として、平子の目の下の傷跡(最初、ホクロだと思った。絵だけで表現するのは無理なので、バイト面談のシーンで傷跡と明確になっててほしかった)。平子の幼少時の女装(他の方もレビューでなんでだって書いてますね。おそらくは丈夫に育つようにという伝統的なものと、魂を取られないように本来の性別と逆の格好をさせて目くらましの魔除けの意味)。女装に関しては特に、魂の不安定さの原因にもなるので、スルーせずに話中に絡めてほしかった。
気になる点は、旅の名付け親である「おじさん」が、平子の仮の名と真名の両方を把握していたところ。いや何のために行きずりの人間に名付け頼んだのよ、って。本人が真名を知らないっていうのも、そんなことあるの?って。その辺は詳しくないので正しいかどうかの判断はできませんが、今まで触れてきた作品や風習からはおかしいように感じます。
没入し切れず残念。