このレビューはネタバレを含みます▼
思い切りネタバレなので注意してください。久しぶりに素晴らしい作品に当たって感情が決壊しているのでここに書きます。
「続」の152ページ、菊さんがソファでうたた寝をしているシーンが一番心臓がギュッとなりました。一見、ただ寝ているだけ。でも元々菊さんは眠るたびにうなされ、浅い眠りしか得られず、そのせいで倒れたこともあった。けど司郎と一緒に眠ると安心して寝れたため、それからは毎日一緒に寝ているのだと思います。ですが「続」の152ページでは菊さんは1人、うなされず、健やかに眠れていた。喜ばしいことなのに、司郎は苦しそうに側に寄ります。司郎は自分はもう必要ないんじゃないか、と思ってしまった。父に愛されず、母に選ばれなかった司郎はどこか人間関係に淡白で、結局人間は1人だと思っているような所があります。けれど初めて菊さんという自分を必要としてくれる人と出会い、満たされていたのでしょう。だからこそ、1人で眠れてしまうようになった菊さんを見て、不安や苦しさを覚えたのだと思いました。
そして最終話の菊さんの言葉です。
「司郎といたいから俺は戻るよ」
「司郎の今や未来や過去のためになることをしたい」
最後、飛行機が戻ってきて、また司郎が飛ばすシーン。司郎の元に再び菊さんが「菊さん」として戻ってくることはないのだろうなと思います。司郎はそれを分かっていても願って何度も飛行機を飛ばすのだと思います。
写真の中で、司郎は両親と共に笑っています。初めの頃、菊さんが見たがっていた司郎の喜ぶ顔を浮かべて、幸せそうに写っています。司郎の喜ぶ顔が見たいから動く菊さんらしい、優しい選択だったと思いました。
海も空も飛べる鴻さんは、空で散ってしまったのでしょうか。戻った時、どの時点に戻れたのでしょうか。空の上か、飛び立つ前か、菊次郎と過ごしている時か。いずれにせよ鴻さんは二度と菊さんになることはない。けれど、司郎の今も過去も未来も、菊さんはきっと見守っているのだと思うと心が暖かくなりました。