百草の裏庭
」のレビュー

百草の裏庭

青井秋

夢の世界に誘われ穏やかな気持ちに。。

ネタバレ
2022年3月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表題作と他短編4部収録。
ひとつひとつの描写に趣きがあり、ゆっくり噛み締めるように魅入ってしまいました。

表題作の「百草の裏庭」優しい光が溶け込むような温かく美しい物語なのに、ギーゼルの長き孤独と今の幸せに鼻の奥がツンとなる。
「stalks」管理するもの。されるもの。
カンナが媒介者に選んだのは優しい手を持つ庭師。
種を結び、命を繋ぐ。
人が愛しい気持ちで愛でる対象は、必ずしも人とは限らない。
植物視点で描かれた物語がとても美しく感じる。
「passage」水槽の魚の描写だけで憂鬱な日常が伝わってくる。
普段ならすれ違ったままだったかも知れないpassage での出会いに晴れやかな予感が心地よい。
「侵食」未知の菌糸に侵された恋人。自身の認識、証明。
愛してるという恋人の目に、どれほど彼を愛しているか初めて気づき1人にさせない決意。切なくも美しくとても好き。
「旅の途中」闇の王子と羊飼い。これもなんて美しいんでしょう。。

美しく愛しい日々、ゆったり流れるような独創性溢れる世界観に、穏やかな夢心地です。

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