アーモンドを七粒
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アーモンドを七粒

夏水りつ

何度も読みたくなる

2022年3月21日
渡辺のしたことは酷いことだったけど、それから逃げたり卑屈になったりしない葉月の健気さと芯の強さに心がギュッと苦しくなりました。自分には手に入らない幸せを、幾度諦めできたんだろう…と。それに対し、なおも真剣な恋愛に向き合うことに臆病な渡辺。過去に傷つけた相手に対する後ろめたさや後悔、そして自己防衛、本当は優しい心を持っているはずなのに見え隠れする心の弱さ。
2人の関係は一旦壊れてしまいますが、ふたたひお互いの気持ちがだんだんと近づく過程はじんわりとして、自分の手を重ねて温めてあげたくなるほど、愛しく、かけがえのないものでした。
そして、酷いことをしたけど、渡辺もそんな悪いやつじゃないよ、と。ただ不器用で真っ直ぐな目をどこかに置き忘れてきちゃっただけなんだよ、と言いたい。それが葉月と関わったことで変わることが出来た。葉月のいじらしさ、強さが渡辺を変えたんだと思います。
紆余曲折を経てたどり着いた結末。感情移入して目頭が何度も熱くなったけど、読後感は爽やかです。タイトルも秀逸。繰り返し読み返したくなる素晴らしい作品でした。
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