ノイズの空にカナリア【SS付き電子限定版】
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ノイズの空にカナリア【SS付き電子限定版】

風緒

音が心に響いてくるストーリー

ネタバレ
2022年4月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●作者さんの中編(1冊に2本くらい)が好きで、作者さん買いしていますが、本作は珍しく(?)1冊1本。「悲しい感情が音で聞こえる」というファンタジー設定ではありますが、その設定が本当によく効いていて、いつもどおり読後感も良かったです。
●美しい音を鳴らす真澄。伊之瀬は最初こそ音への興味がまさって、悲しみの音が鳴るように酷い言葉で真澄を煽ってしまいますが、徐々に彼の感情そのものに心を寄せ、彼自身を見たい触れたいと思うようになっていきます。無自覚なんですけど。
●真澄の兄への想いは表に出されることはない。でも伊之瀬にだけは聞こえる。全部受け止めるつもりで「どんな音も聞いてやる」と抱き合って…。真澄が兄への感情を爆発させているのは頭では分かっているはずなのに、伊之瀬は自分の中のチリッと焦げるような感情の音を聞いてしまいます。
●伊之瀬は人の音が聞こえていたばかりに自分の感情に疎い。そんな伊之瀬に今度は真澄が寄り添って、音が聞こえること、聞こえなくなったことがどういうことなのか考えたり、伊之瀬の代わりに悲しんだりして、伊之瀬の心を開いていくのが良かったです。
●真澄の悲しみの音から生まれた曲が、兄の心に届いたというのも素敵。「それが伊之瀬さんに音が聞こえていた意味だ」と、真澄が伊之瀬を救います。“響く”お話でした。
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