僕等がいた
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僕等がいた

小畑友紀

パニック障害と共依存症

ネタバレ
2022年4月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 全巻読みました。
転校後の矢野の境遇が辛すぎる。矢野が消息を絶ち、ずっと七美に会いに行けなかったのは、ギリギリ持ち堪えていた過酷な日々が母親の自死により崩壊し、パニック障害を発症、共依存症に陥ってしまったからなのではないでしょうか。共依存症は大なり小なり元々大分前からだったのでしょう。七美は矢野に会いに行き積極的に関わるべきだったと思いましたが、この時の後悔が後に矢野を想う強い決心に繋がったのだと分かりました。
矢野、竹内、千見寺、七美、有里のそれぞれの会話の中に矢野の心境などが語られていて腑に落ちましたが矛盾も感じました。再会後、紆余曲折を経て二人が結ばれ本当に良かったと思いますが、一見それぞれの絡み合った様々な問題がタイミングよく全て自然に解決されたように見える結末は、状況が変わっただけで、そもそもの根底にある矢野自身の共依存症を克服できなければ、その結末にはたどり着けないのではないかと思いました。それだけではないとは思いますが、それこそが元凶で、それがなければ、これほど苦悩せずに、もっと早く本来の望み通り七美と再会し、二人一緒の日々を掴むことができていたはずだったのではないかと思いました。
それとも再会後の過程で少しずつ変化していった心情や状況と共に克服できるものなのでしょうか。
有里の方も母親の死と父親との和解が、執着していた矢野から離れる切っ掛け、選択に繋がるとは思えなかった。互いに解放されてよかったですけれど。自分には難解。気持ちの折り合いがつかないことで、もっと理解できればとずっと考えてしまう、衝撃的、感動的な作品でした。
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