進撃の巨人
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進撃の巨人

諫山創

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ネタバレ
2022年4月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 現代の国際問題を顕すかの如く、洗脳教育や終わりのない憎しみ・争いの連鎖をとことん余すことなく描いた作品だったと思う。人と巨人の争いから、人と人との争い。パラディ島とマーレの争いから、主人公とかつての仲間の戦い。誰よりも自由を願い求めた少年が、誰よりも自由から程遠い短い生涯を閉じたことが、あまりにも救いが無く悲しく思った。誰にも相談できず、たくさんの人の記憶の波に揉まれ、自己意識を見失いそうになる姿は、飛ぶ方法を見失った、囚われた鳥そのものであった。だが、平和を願い和平を結ぼうと努力するかつての仲間の姿を見て安心できた。どんな困難も、エレンの仲間なら乗り越えていける。調査兵団は、如何なる困難があれど進み続けるのだと。
ひとつ気がかりなことは、建物の破壊により退廃した都市の中、少年と犬が向かう先で、また悲劇が起きる可能性が示唆されたことである。エレンのお墓の木がとてつもなく大きく成長した場所は、始祖ユミルが巨人の力を得た場所と酷似していた。エレンが自分の命をかけ、仲間を裏切り、愛するミカサに自分を殺す選択をさせ、ユミルの民から巨人の力を解放したというのに、またその力が目覚めてしまうかもしれないという描写である。これではエレンがしたことが無に期してしまう、あまりに報われない最期だと思った。悲劇の連鎖は繰り返してしまうものなのか、そう思った。
戦いの中に様々なテーマを織り込んだ、考察が捗って仕方の無い作品だった。この作品をほぼリアルタイムで見ることが出来た時代に生まれたことに感謝しかない。もう一度、最初から見返したくなる作品である。グロテスクで目を覆いたくなるシーンも多々あるが、本当に良い作品だった。
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