コオリオニ
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コオリオニ

梶本レイカ

普通とは?異常とは…?

ネタバレ
2022年4月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人間ドラマを見るような作品でした。八敷、佐伯、鬼戸がただ普通に生きていくことが、なぜあんなに難しいのか。お互いを支えに生きてきた八敷と佐伯の、お互いの捉え方の違いに、胸が苦しくなりました。佐伯がどこかで言葉にしていれば、あんな結末にはならなかったのかもしれないし、遅かれ早かれ、同じだったのかもしれない。鬼戸も父を反面教師にして生きてきた。八敷や佐伯ほどではないかもしれないけれど、何が正しいのかを歪ませられたまま。それぞれ何とか生きてきて、現実に折り合いをつけてうまくやっていたはずなのに、それでもまた虐げられる。彼らが異常なのか、彼らをそうした環境が異常なのか。他に生きる術があったのか。せめて最後の八敷と鬼戸との逃避行の先に、彼らの生きる幸せがあることを。
読むのを悩んでいる方には是非、手にとってほしい作品です。
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