マグネット兄弟【特典ペーパー付】
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マグネット兄弟【特典ペーパー付】

日野雄飛

恋愛とも共依存ともちょっと違う気がする

ネタバレ
2022年4月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 175ページ。
実兄弟もの。
これはものすごく良かった。
物語のはじめから少しずつ見える兄の過去。後半で明確になった時の、読者から見えていた「ビッ/チでダメな兄」からの鮮やかな逆転が衝撃的でした。子供の頃から現在まで、兄はずっと兄であることを全うしていたんだなあ、と切なくなります。よくやった、えらい。
この二人は、兄弟であり、真相を隠す共犯者でもあり、父親との血の繋がりの恐怖も抱えていて、歪んでしまっているとわかっていてもなお、お互いがお互いにしか救えない関係性。これを過度な演出なくさりげなく描き切れる力量、この作者さん素晴らしい。
エロシーンに関しても、最初のハウツーレスキューの兄弟っぽさ、中盤の助けを求めてる感じの悲しさ、ラストの思いが通じ合っての安心感、それぞれにちゃんと意味があって無駄がない。
当て馬(?)二人はちょっと気の毒。
母親に関しては、早くに亡くなっているであろうことしか描写がありませんが、そこを詳しく掘ったらもう一闇ありそうで恐ろしいですね。
補足説明として : 血の繋がりの恐怖というのは、「自分が親と同じになってしまうかもしれない」という恐怖を指しています。毒親持ちにはいついつまでも付き纏う恐怖で、作中で「同じでない」ことを確認してささやかな安心を得る兄弟のそれぞれの姿がとても哀れで切なかったです。
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