このレビューはネタバレを含みます▼
●「BL以外のカテゴリに分類されている実質BL作品」というのが時折ありますが、こちらの作品こそ「BL以外のカテゴリ」に入れたらもっと多くのかたに読んでいただけるのでは?なんて思いました。
●ボーイズのラブ要素は(大事な一面とはいえ)こちらの作品のほんの一端であって、自らの性に激しく囚われている有馬を軸に、ヒロイズムやトラウマ、他者を理解しようとすること、自分を理解してもらおうとすること、自分が自身を理解すること、それらの難しさ、それでも互いに寄り添おうとすること…主役の二人だけでなく、登場人物皆がそれぞれに悩んだりぶつかったり寄り添ったり。もう、本当にいろんな思いが湧き上がってきます。なお、児童性的暴行の直接描写がありますので苦手なかたは注意です…が、そこを乗り越えて読んでみていただきたい気持ちです。
●両親の離婚を経て、人のうわべだけを見てしまう大河。有馬(マリア)に出会って、彼の(彼女の)ヒーローになる!とアタック。一方、辛い経験で自分の男の部分を受け入れられない有馬。「男になりたいのに」という切実な思いとのせめぎ合いがヒリヒリする。大河が「どっちでもいい」「どっちも好き」という態度で接するのが素晴らしいと思う。
●「演じる」ということが二人にとってとても大切な行為で、それを通して自分のことを伝えようとし、お互いを(自分自身を)分かろうとする。大河の友だち、演劇部員や顧問の先生、みんなが二人に対していろんな感情を抱いて、いろんなアプローチをしてくる。ホント…考えさせられます。
●夫に愛してないと言い切った母ちゃんも、浮気性だった父ちゃんも、女の子でいることを強要した母親も、児童性愛者の先生も、なんだかんだ苦しんでた。(でも犯罪は絶対ダメ!)隅から隅まで、どのキャラクターにも思いを馳せることができる。すごいです。
●過去の大河と有馬に、ほんの少し交わる糸があった…という構成の妙も。読み終わり、胸いっぱいで…なかなかうまく言葉になりませんでした。登場人物みんなを、是非見守って下さい。描き下ろしはすごくほのぼので、嬉しくなりますよ。(長くなりすみません…)