にわにはににん
」のレビュー

にわにはににん

中野シズカ

庭を巡るファンタジックな4つの短編

ネタバレ
2022年4月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 外からはその全貌は見えず、時には枯れてしまったり勝手に蔓延ったり、住む人の思い通りにすらならないのが庭です。視点を変えると小さな庭から小宇宙すら喚起させる、そんな短編集です。『水槽屋敷』寝たきりの坊やの往診に来た医師が、窓辺にガラス玉を置いてゆきます。やがて屋敷の中に雨が降り、水槽みたいになった屋敷の中を坊やは泳いで探検します。光の射す水の流れがとても綺麗です。『ユーレカの庭』バスから一部だけちらりと見える庭が気になる女子高生のお話。全て見えないから夢があり、夢は増殖することを発見します。『ワタシのお庭』庭と庭作りに魅入られた若妻の、庭と一体化した心象風景が描かれます。エピローグでは彼女の庭が夢を見せてくれます。『にわにはににん』先生の自宅にレポートを届けに来た瀧くんはトイレを借りるのですが、家の中で迷い、庭に捕まってしまいます。心に迷いのある者が捕まってしまう迷いの庭の奥には不思議な平穏があるのでした。ほんのりBL風味です。『庭師の休日』プロローグで庭の精と松葉とを見事に鎮めた庭師も、雨の日はお休みです。この庭師を最後に友人が訪ねて来るのですが、ここから『てだれもんら』に繋がるイメージです。
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