見えない星
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見えない星

京山あつき

遠くても見えなくても確かにある輝く星

ネタバレ
2022年5月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『聞こえない声』の続編。この後『枯れない花』に続きます。新学年を迎え、野球部の花形•今井先輩は3年に、地味な引田は2年に進級します。部活も気持ちも夏の大会に向かう時なのですが、皆が帰った後の暗くなったロッカールームで二人は毎日のようにキスしています。それは言葉よりも確かに気持ちを伝えるのでした。だけど引田が女子と親しげにしているところを見てモヤっとする今井先輩、実は今井先輩にプレゼントを渡して欲しいと頼まれていた引田と、DKらしい心の揺れもあったりします。そんな二人を、夏の大会という観客も巻き込んでの独特な熱気が包み込みます。前作よりも1学年上がり、一歩進んだ関係になった二人ですが、今井先輩の引退や卒業を控えて、将来についてや今のようには会えなくなることの不安など、高校生という限られた期間ならではの悩みが丁寧に描かれます。同時に、高校野球の夏の大会の一種独特な空気感もリアルに伝わってきます。真面目であること、頑張ることを無駄なように思って、ちゃんと向き合わなかったことを悔いる今井先輩は、やっぱりカッコいいのでした。
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