花のかんばせ
」のレビュー

花のかんばせ

生嶋美弥

あの当時も、そして今も。

ネタバレ
2022年5月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ ずいぶんと昔の作品です。まさか、シーモアさんで再会できるなんて。メインの物語よりは、少年男娼の物語が好きでした。
物語は少年男娼が熱があるにもかかわらず客の袖を引きます。この時点で過酷な境遇とわかりますが、引かれた客は少年を慰みにすることなく、休ませてくれて馴染みになります。客に惚れてはならない以前に、その客には想い人がいて、自分はその身代わりでしかないと悟る少年。心臓に爪をたてられ流す涙の一滴一滴。我慢強くそこで、地を這うように生きるしかない運命。逆らうことなど出来ず、少年の未来は途方もなく暗い。続く「秘密」では、年期あけた少年は青年となり、客だった男にいかばかりかの教育を受けてその下で働くことになります。綿の着物と西洋服で身分の上下がわかるのもこの時代ならでは。厳しい身分制度やしがらみで、二人がハッピーエンドになることは決してありません。人生に一つだけの引き出ししか持てずに、報われぬ愛を一生涯抱え、降り積もる雪のようにこの先も生きて行く。惨めで、悲しくて、やるせないお話です。

A様。元気です。有り難うございます。フォロー作品、迷っていましたが、決心着きました。読んでみます。
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