あした愛かもしれない
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あした愛かもしれない

山下街

作品に流れる空気感が良い

2022年5月17日
男子高校生や大学生の青春BLはキラキラ感が眩しすぎてイマイチ刺さらない私。でもこの作品は試し読みで『なんか読めそう』と思ったので購入してみました。
良い意味で青春BLのキラキラした感じはなく、全体的に静かでしっとりとした空気感の作品です。
何か大きな事件やすれ違いが起こるわけでもなく、たまたまアパートで隣同士の大学生が恋に落ちるまでとそれからの日常が描かれています。
物語としては単調な話なのに、作品に流れる空気感がすごくよくて飽きずに読めます。テンポも良い。
主役2人とも好感の持てる子たちで可愛い。周りの子も良い子で読後感良しです。
また、セリフがないコマが多いですが、キャラクターの表情や手のイラストで感情が伝わってくるようで、『マンガ読んでる感』を感じられてよかったです。
エロ描写は匂わせカットな感じなのでBL初心者にも読みやすいと思います。

ごく自然に男の子同士が惹かれ合うのはBLあるあるで、そういう作品にあたると『イヤイヤイヤ、ゲイじゃなくてそんなすぐ男性に惹かれるってないでしょ』といつも心の中でツッコんでしまうのですが、この作品はそういう気持ちにならなかった。男同士のラブストーリーなのに少女マンガの男女の恋愛のように自然に受け止める自分がいました。
登場人物が主役や友だちを含め『男なのに』みたいな葛藤や偏見がほぼないからかなぁ…。でもBLによくあるBLであることが大前提の世界観なわけではないんです。日常を切り取った自然体のマンガ。今の若者ってこれくらいナチュラルに同性カップルを受け止めるのかなぁと思わせるような作品なんですよね。
例えば料理をするとか傘をさすというような日常の些細な動きの描写がリアルに感じられる絵で、自分のいる世界の延長線上の話みたいに思えました。
読み始めたときはズバ抜けて絵がうまいという印象でもなかったのに不思議。

もしかしてそう遠くない将来、今よりもっと同性同士のカップルが自然に存在するようになるのかも、と少し先の多様性が認められる未来を感じられる作品でした。

少し短く感じたのと、本当にトントン拍子に話が進むので、やっぱりBLはファンタジーだなという感はあったので☆4ですかね。
総186ページ
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