その瞳にうつるもの
」のレビュー

その瞳にうつるもの

葉芝真己

お互いの瞳に映るそれぞれの孤独と想い

ネタバレ
2022年5月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校の代理教員となった池内は、宗嘉孝という2年生のお陰で生徒達が大人しく授業を受けてくれて驚きます。半年前に暴力事件を起こしたという宗嘉は物静かで、進路希望に何故かオランウータンになりたいと書いていました。池内は宗嘉と暴力が結びつかず不思議に思うのですが、半グレのリーダーと宗嘉のいた拳法部の部員達が宗嘉を引き込もうとする場にたまたま居合わせ、宗嘉がキレて滅茶苦茶に暴れるのを身をもって止めるのでした。宗嘉に殴られた池内は宗嘉を庇い、学校や親には言わないと約束し、我に帰った宗嘉は池内に付き添います。そこで二人はお互いの出自を語り合います。施設で育った池内、9歳まで母親からの虐 待を受け、保護されて今の家の養子となった宗嘉。群れを作らず森の中でたった一人で生きてゆくオランウータンになりたいという宗嘉の幼いまま深く傷ついた心と、家があり学校に通っていても独りぼっちの宗嘉の深い孤独に胸が痛みます。そして施設の大勢の中で誰かに頭を撫でてもらいたかった池内が、宗嘉だけを撫でててやると約束します。エロは無く、絵柄や時代背景はかなり古いのですが、今に通じるテーマは深いです。
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