このレビューはネタバレを含みます▼
お値下げになっていたので、星の数が伸びていないのは読んだ人が少ないからだろうと、思いきって読んでみました。とても良かったです。内容はメルヒェンで絵も綺麗、考えさせられる場面もたくさんありました。
悩める少女達を、大学生の阿仁屋くんと心理学の眞山先生がそれぞれの深層心理に入って救い出すのですが、現実に心の世界に本当に入り込んでしまうところで、最初は「え?」と焦りましたが、これは「メルヒェン」なんですね。
心ほど(悩みを抱える人の心はなおさら)広く深い世界はない、いや、心の世界こそ本物の異世界だ、と思うと、作品の中にグッと引きこまれました。
心に広がる異世界も、漫画や小説で人気の異世界も、どこかの国の何かの童話と繋がっていてもおかしくないんですね。この作品が教えてくれるように、童話はもともと人間の根っこの部分から生まれた物だから。
二人の主人公はどちらも魅力的。
お人好しの阿仁屋君には、何かと大変だろうなと同情したり、共感したり。でも、人の苦しみに真っ直ぐ向き合う苦労をいとわないのは彼の強さだし、生き方なんだと、彼の幾つかの言葉や叫びから伝わってきて、心が震えました。彼は作者様の分身なのかもしれないし、私の理想像の一つかもしれない。
そして少女達の心の世界で重要な役割を与えられて、阿仁屋くん自身が救われているんだと思えるのが良いです。
さらに最後に眞山先生のお話にまで展開するなんて、読後感はとても満足。ただ、嵐くんの最後の方の扱いにはモヤッとはしますが、なんともメルヒェンなお話なので、主人公二人の思いに従うことにします。
初めて読む作者様の作品でしたが、きっと何度も読み返すことでしょう。