人でなしの恋
」のレビュー

人でなしの恋

かわい有美子/金ひかる

種類が異なる大切な想い

ネタバレ
2022年5月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「金の小鳥の啼く夜は」に登場した仲の良い学生3人組のお話。
登場人物は、類い稀な文学的センスを持つ仁科、人当たりがよく温厚で誠実な花房、華奢な見た目に反して男っぽい性格の黒木。始めこそ良いバランスで友情を育んでいても、一度その均衡が崩れてしまうと‥。
なかなか難しい三角関係ですが人物描写と心理描写がとてもお上手だったのでお互いの立ち位置や相手に抱く感情などが理解しやすいです。特に仁科の感情は理解できるからこそ厄介で。この仁科、唯一無二で稀有な才能の持ち主でどんな状況にあっても花房は言わずもがな、黒木に対しても変わらず大切に思う気持ちが健気で純粋。だからこそ、彼を人でなしとは言うには抵抗がありました。
途中、江戸川乱歩調のホラーな味付けがありますが、あちらとは全くの別物。人でなしというよりも、1人の人間が抱く種類の異なる大切な想いが誠実に描かれていたと思います。ただ、金の小鳥〜に比べると少し中弛み感もあったので星4つで。
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