魔女と猫
」のレビュー

魔女と猫

黒井よだか

たくさんの人に読んで欲しい傑作です

ネタバレ
2022年5月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『オメガの婿取り』が面白くて作者様買いです。タイトルにある魔女を題材に、かなりハードボイルドなファンタジーです。ジェットコースターのようにハラハラ、ドキドキと目まぐるしい展開に夢中になって一気に読みました。
これをギュッと凝縮して一冊にまとめるには、削る作業にかなりご苦労されたのではないかと思うくらい濃くて深い内容で、何一つ無駄がないんです。全ての細かな設定に意味を持ち、緻密に練り上げられた秀逸な作品に、心が震えました。まさにスタンディングオベーション級の感動作です。
魔女の能力を持ち、そのために大切な人を奪われてきた寿一。自分の力を悪用しようと狙う者から逃れるために、誰も巻き込まないように孤独に耐える寿一が哀しくて胸が痛みます。
そして寿一の隣人須藤もまた、壮絶な過去を持ち十字架を背負うように、自身の生に執着を持たず、死に急ぐような生き方がとても辛くて胸が押し潰されそうでした。
胸が痛くて苦しくて、彼らの平穏な幸せを願わずにはいられませんでした。
寄り添いながら孤独を埋め合い、もがきながら懸命に生に向かってる二人が、それぞれの生きる意味、生きる価値を取り戻して行く様に涙が溢れて止まりません。一緒に生きて行きたいと思える唯一無二の相手がいる幸せを掴んだ二人に感涙です。
人物紹介で須藤のニコニコ顔の意味を知った時、とても切なくて、寿一と共に心から笑顔になれた時は見てる私も幸せでした。
最後まで手に汗握る展開でしたが、とても面白くてかつ感動出来る作品ですね。
魔女を狙う者と魔女狩りで狙われる者。その二組がどちらを切り取って描かれても、物語が深くて、一冊におさめるにはもったいないほどでした。狙う側の夏美と啓悟の背景もドラマがあり、彼らのスピンオフがぜひとも見たいものです。もちろん、寿一と須藤の続編も見たいです。
力を供給するためのエチではなく、心から愛し愛されるエチがとても幸せそうで、美しい交わりでした。追われることに怯えながら暮らす日々に終わりを迎えて幸せになって欲しいと、心から願います!
良かったぁぁ。めっちゃ良かったぁぁ。
涙なくして読めませんでした。
どうか、多くの方の目に留まりますように…
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