フィメールの逸話
」のレビュー

フィメールの逸話

鈴木雅子

表紙で損してる。人間味あるファンタジー。

ネタバレ
2022年6月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大昔、姉が買っていた週刊セブンティーンで連載されていた漫画。タイトルだけがとても印象に残っていましたが、内容は忘れてました。この電子版では、表紙で損していると思います。絵柄はもっとスッキリした昔の少女漫画で読みやすいです。
あの頃のセブンティーンはきわどい漫画を描く漫画家さんが多くて、大人っぽいイメージがあり、鈴木雅子さんもその一人でしたが、この作品や他の作品を読むと、意外や意外、普通にティーンが読む漫画だったんだなと再認識しました。
「フィメールの逸話」、どうしてBLに入れられてるのか謎ですが、それくらい、どのジャンルにも入れられない印象深さがあるという事でしょうか。どちらかというと、ファンタジーな気がします。同じ高校の2人が、一人はガスで自ら命を絶ち、一人は事故に遭って死ぬ。ところがなぜか、事故死した少年の魂だけは残り、ガス死したらしい、顔しか知らない他のクラスの女子の部屋にたどり着き、その身体に入りこんでしまった。これを利用して、地味でおとなしかった彼は性格を積極的に変え、今まで胸に秘めていた、好意を抱いていた男子に、男ではなく女子として接近する事ができ、生きる喜びを実感し、やがて、自死した少女を苦しめた別の男子にもある意味復讐を遂げてあげる事が出来た。その、天真爛漫で、純粋な少年の心のままの女子の正体を知ったとき、好意を持たれ、自分も惹かれていた男子は、自我を保つのに戸惑い、自分のプライドや常識のほうを選んでしまう形に…。仮面が割れていく少女の姿は、好きな人に全否定された少年の人格から何から全てを打ち砕いた姿でもある。そしてもう一度、命がなくなる。でもここからが始まりなのかもしれない。この2人の将来は、今度こそ何も知らない身も心も本当の女子になれた少年と、どんな形でもいいから彼を好きだと言えるという自信を持てた男子とで、新しく歴史をつづっていくのだろうし、お互い、知らない者同士のように恋が始まって、長い道を歩いていくのだろうと、ホッとさせられる最後でした。
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