このレビューはネタバレを含みます▼
ウジンという卑劣で臆病、被害妄想癖のある人間。サンウという暴力的で思考回路が幼稚なままの人間。とにかく二人の人間性がコミックスとは思えないほどのリアルさを追求されていて、フィクションたる美しさは1ミリも感じられなかった。もちろん、いい意味である。序盤からリアルな暴力と殺人、監◯、スプラッタ、レ◯プとありとあらゆる加虐を見せつけられたにも関わらず、ウジンが受け入れる姿勢を見せたので、ここからBL展開か?と思いきや、逃走を図るウジン。心理描写を文章化しない場面が多々出てくるので、読んでいてこちらも騙されます。装飾品や小さな行動にもしっかりとした伏線があり、ラストシーンでは潮が引くときのように綺麗に拾い上げていきます。本当に見事なラストで、悲しいくらいにドラマチックではなかった。死に方も酷く惨め。全身火傷を負ったサンウは痴呆の老婆に殺害されていますが、ウジンの名を呼びながらも本人に会えず仕舞い。ウジンもサンウの背を追いながら赤信号に飛び出しますが、こちらを向いて笑うサンウではなく、女と去っていくサンウの背。その上サンウは殺鼠剤をウジンに飲まされたと誤解したままで死んだと思うと胸が痛いですね。天国で手を繋いでうふふあははの展開は絶対に待っていない二人の末路。読了後の余韻は何とも言えない苦味が残りますが、このラストでベストだと思える終わり方でした。