このレビューはネタバレを含みます▼
「リンク アンド リング」がとても好きで作家さん買いしました。「リンク アンド リング」の登場人物たちが、ゆっくりじっくり自分たちのペースで関係性を作り上げていくところが好きだったのですが、今作にもそれに通ずるものを感じました。
人と関係を作っていくことの難しさ、面倒臭さ。
相手を理解することなんてそう簡単にはできないし、別に誰とでも打ち解けあわなければならない訳でもない。でも歩み寄ってみて、分かり合えた時にはやはりそこに生まれる何かがある。作者さんは言葉にはできないその情動を描きたいのかなと思いました。
本人も忘れてしまっている記憶を、触れることで共有して見せることができる「コネクタ」の能力を持つユージン。
この能力は相手が心を開いてくれていないと、ノイズが入って上手くいかないというところが面白い。隠された記憶を探るため、二人は関係を深めていくのですが、これがそう簡単には上手くいかない。
時に行き違いながら楽しかったという思いを積み上げていく二人。不器用さも含めて全てが愛おしかったです。疲弊しながらも頑張るヒロに共感したり応援したりしながら読みました。
自分自身を受け入れ、二人なりの形を作り上げたのを見て、理想的な関係なんてない。人と人が出会ったらその数だけそれぞれの関係性がある。お互いが一番心地良い形を見つけられたらそれでいいんだと思えました。
全然上手くできないな、これでいいのかなと悩んでる人への励ましにもなると思います。私も人見知りする方なので救われた思いがしたし、読み終わってとても清々しい気持ちになりました。
人と心通わすのってやっぱりいいなと思える心温まる作品です。