オリンピア
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オリンピア

丸木戸マキ

人形が人形に戻る時

ネタバレ
2022年6月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 20年前に失踪した父親の遺品の中から少年型のラブドールが出てきます。息子である礼央が局部に指を入れた途端に喋りだした人形は、まず亡くなった父親の為に祈ります。半朱と名乗った人形は、父親からあらゆる知識を与えられており、中でも物語と音楽をとても愛していました。半朱に寝物語を聞かせてもらう礼央は、冷たい筈のシリコン製の半朱の身体に温かさを感じます。それはとっくの昔に忘れていた父親の気配だったのかもしれません。生き生きとした半朱の願いを叶えた礼央の迎えた朝に胸が痛みました。説明口調に陥らない、短編ならではの鋭さを持つ、寂しく美しいお話でした。
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