ひとりよがりのバニラ【電子限定おまけ付き】
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ひとりよがりのバニラ【電子限定おまけ付き】

冬房承

ヘルプ欲しい気持ち分かります。6/11更新

ネタバレ
2022年6月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 美しい作画と孤高の文学青年に見えた受けの幾世の意外な側面-文学フェチでMの本性-が見透かされて、あっという間にSM展開になる下りや、文学青年の脳内を見たような絵画的描写が魅力的。さらに、受けの幾世と攻めの風見が「ひとりよがり」同士だからすれ違い、タイトルの「バニラ」-挿入なしの性行為-のまま分かれてしまう(フォローさま感謝です!)ことを意味するなど、分かると嬉しくなる仕掛けに満ちた作品で面白かったので☆5にしたのですが。
一方で、どうしてそのようなことをするのか心情を理解するのが難しい作品でもあります。一体なぜ風見が幾世のSMシーンの動画を送るのか、幾世が風見の小説を編集部に通さず、でもアイディアを鈴原に伝えてしまうのか理解に苦しむところです。
*思うに、この作品で、受けの心情が分かりにくいのは、本当はMなのに本人は無自覚で、他にも色々無意識に行動している面があり行動と心情が一致していないからでは。攻めは、後書きにもあるように、小説に愛着はなくて、元々Sでもなく(素質はありそうですが)行動原理が気になる幾世の気を惹くためで、こちらも行動と心情が不一致。幾世は、学生時代に風見とSMプレイに興じたことは、今では黒歴史。全てを曝け出して拒まれたことがトラウマとなって、風見が提出した原稿も、その過去同様暗闇に隠してしまい、一方文学的才能にはやはり惹かれるものがあり鈴原に話題として提供してしまったのでは。
*他方、風見は、幾世が自分の小説のアイディアを、幾世が傾倒していた鈴原に提供したことに嫉妬して、過去に興じたSMプレイを、最初から鈴原に送信することを想定してスマホをセッティングして、鈴原へ盗作させたことについての謝罪を言わせてますよね。こんなことを許す相手がいることを見せつけて、鈴原が引くよう仕向けたのではと想像します。この時点では、学生時代の誤解は解けていないので、幾世は風見の行為をお仕置きのようなものと、受け止めています。その動画を見た鈴原が、2人がSMプレイをするきっかけとなった官能小説の作者であるとは予想外だったはず。しかし、結果的に鈴原の本性を引き出して、予想以上にハードなSMプレイを展開することになってしまい、幾世には盗作させた後ろめたさがあるのでお仕置きの意味でSMプレイに応じたのかと。
鈴原が2人のトリガーに、2人が鈴原のトリガーになる構成もセンス有り。理解の一助になれば幸いです。
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