アイ・ドント・クライ
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アイ・ドント・クライ

イシノアヤ

アイドルから俳優への孤独な階段の先の恋

ネタバレ
2022年6月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ オワコンアイドルユニットのメンバー姫野亜樹は真面目さ故に浮いていますが、その真面目さで俳優もこなし芽を出そうとしています。頼りにしていた敏腕マネージャーが他に移り、代わりに配属されたまだ若い笠原にメンバーはがっかりしますが、そのさり気ない気配りに皆いつの間にかやる気になります。けれども努力空しく解散が決まり、笠原は姫野に本格的な俳優業に専念することを勧め、姫野は新しい事務所で新人として一から始めます。笠原を見返してやると最初は空回りする姫野ですが、バイト先に現れた笠原の言葉で自分の甘えを知り、一端の役者になるまではと笠原のアドレスを削除するのでした。飄々として一見捉えどころのない笠原の、姫野を始めマネージメントしたタレント達への深い心遣いが胸に染みます。家族と断絶状態の孤独な姫野が、心の奥では笠原に支えてもらいたくて泣きそうになりながらも一人でコツコツと這い上がり、ついに笠原との再会を果たします。脇キャラ、サイドストーリー共に重厚な造りで上下巻ともに230頁越えと読み応えがあります。回想シーンや激情に駆られるシーンの、セリフ無しのコマ送り的な表現が素晴らしいです。笠原の友人マネージャー井田の担当するケチャッパーズについては『union』で詳しく読めます。
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