こぼれた余白
」のレビュー

こぼれた余白

のきようこ

普通の二人がただ生きていく話

ネタバレ
2022年6月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ のきようこ先生の漫画の地に足ついたリアル感が好きです。
行き場のない男の子を拾って自分の家で一緒に暮らすっていう、BLとしてはよくある設定の話なのですが、久慈くんを拾った与一さんが、煌びやかでも熱血でも過度に親切でもない本当に普通の感覚を持った普通の人。必要以上に干渉したりしないけど、適切な心遣いはするちゃんと大人な人なのが良かった。
会話もなんかナチュラルで、言葉がストンストンと胸に落ちていく。ちょっとドキュメンタリーを見ているような気分にもなって、普通の人の普通の人生の話が心に響きました。

構えて読まなくていい心地良い漫画です。
劇的ではない、でも登場人物たちの中にはちゃんとドラマがあって、日々ゆっくりと再生していく久慈くんが、身も心も癒され気持ち良くなっていくのが手に取るようにわかる。
与一さんに惹かれるのもとても自然なことに思えたし、馴染んでいく二人が微笑ましかった。
なんだか不思議と心が安らぐ。精神安定剤のような、でも最後ちょっと元気になるビタミン剤のような、そんな感じ。
後半のエチ中の赤裸々な男同士っぽい会話も好きでした。心地良く読めていろんなツボを押してくる自分には奥深い作品です。
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