あいとまこと
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あいとまこと

森世

拗らせ双子に切り込む素直さ

ネタバレ
2022年6月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 244ページ。
三角関係オメガバース。なかなかに危ういバランスだな、と思います。双子同士は親愛、双子それぞれと斗和は恋情かな。もしかしたら将来、別の誰かが現れて関係性が変わるかもしれないけれど、それまでは穏やかな入り江のような日々を送ってほしい。

拗らせた双子の関係が良かったです。双子設定大好きだし、最大限に設定が活かされていて大満足。第二性のせいで雁字搦めになって素直に表に出せなかった二人の大切な気持ちを、斗和が引っ張り出してくれた話。
オメガバ描写として気に入っているのは、ヒートの場面。この作者さんの描くαのヒート(他社設定だとだいたい「ラット」って呼ばれてる)は、正に「目の色が変わった」ギラつきや狂気があって、Ωが萎縮しちゃって抵抗し切れないのがわかるな……ってなります。ヒートに流されないα、というのが好みではあるんですが、この作者さんのだけは「これは無理……αもΩも抵抗できないわ……流されるとかいうレベルの話じゃないわ……」という絶望感がすごい。
斗和がだんだん双子の見分けが付くようになっていく描き方もとても好み。初めから「なんとなく」わかるのではなく、相手を理解しようとする気持ちで「よく見る」ことで違いに気付く(特につむじ、これをよく見られる位置にいられるのって、相手がある程度心を許してる状態なんじゃないかと思うのでそこにも萌えがある)。そんな、本能ではない素直なアプローチで、本能に翻弄された双子に近付いていくのが……だから双子は斗和のこと好きになったんだろうな……と、しみじみと来るものがありました。
そして二周すると、愛司の内心が思いやられて苦しさ倍増。
〜〜〜〜〜
あと、ふゅーぷろのオメガバース設定では、番のα限定になるのは“発情期中のみ”ということになっており、話運びにそこが上手く使われていたのも良かったです。
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