僕らのミクロな終末
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僕らのミクロな終末

丸木戸マキ

予期外嵐の前に咲く、賞味期限切れの花

ネタバレ
2022年6月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 世界の終わりというのは、不条理なようでいて、一種の超現実である。 鏡のように、文明の道徳や倫理を無視し、人間の心の中にある最も望むもの、つまり、人間の存在価値を真に定義するものを映し出すことができるのです。 これは運命の審判であるはずだ。 この物語では、真澄の心が玉ねぎのように何層にも剥がれ落ちていく様子が見て取れます。 30歳で人生が脱線した痺れ、20歳で唯一の恋人に捨てられた心の傷、愛が芽生えた時の情熱。 普通の人が、死ぬ前の10日間に、10年間、いや、生涯を通じてあった傷を自分で治すというのは、ちょっと信じられないようなことだろうか。 因果応報のドラマチックな始まりで、真澄は世界の終わりを目前に、自分の人生を狂わせた宿敵に出会う。 真澄を傷つけた野郎は、憎しみを捨てさせるために安楽死の薬を誘惑し、死体処理に同行させる。 サスペンスフルな展開である。 真澄は、自分の心に傷を負いながらも、他者を啓発することができる、平凡でありながら愛すべき存在なのである。 その後、物語はロードムービー調に移っていきます。 対立する元恋人たちが、子供の願いを叶えるために最後の旅に出るが、その道中で登場人物たちの過去や怨念が明らかになる。 登場人物の関係も、時間の経過とともに静かに変化していきます。 作者がもう少しリツグの心を掘り下げてくれたらよかったのにと思う。 例えば、両親の愛に誘拐されたため親密な関係を維持する方法を知らないが、内面は空虚で不安であり、より多くの人の愛を得ることで自己満足を得たいと願っているが、再び愛に誘拐されることを恐れているなど。 親の愛に欠ける主人公たちには、対称的で正反対の美しさがあります。 加害者は多くの人に愛されてきたが、悪人になってしまった。 被害者は加害者に愛されてきたが、修復不可能なほどの傷を負い、それ以来、人生は暗澹たるものになった。 結末は必然なので、ホッとするのか残念に思うのか、複雑な心境で読みました。 この変えられない結末があるからこそ、結果よりも過程を大切にできるのかもしれませんね。 でも、もっといい人生を送れたはずの真澄が、やはりかわいそうです。 終末という超現実の前では、どんな愛も憎しみも淡白になる。だから、こんな小さな、はかない人間の美しさは、よりいっそう貴重なのだ。
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