一番大切なものが抜け落ちてしまったわけ

ネタバレ

2022年6月18日

このレビューはネタバレを含みます▼ 交通事故に遭った井上昴は大きな怪我も無く無事に退院しましたが､一緒に暮らす深沢壮司のことだけが思い出せません｡施設で育ち親類のいない昴には他に行く当ても無く､高校の同級生で医大生の壮司と暮らす部屋に帰って来ますが､壮司は同居の経緯や二人の間柄について何も話してくれません｡過ぎるくらいに優しく接してくれる壮司が､ちょっとした会話の端々で見せる笑顔や､反対の辛そうな表情が昴の不安を煽ります｡昴の中での知っていることを思い出せない不安と､心の深い部分を占める思い出せない要因とのせめぎ合いが描かれます｡思い出さない､考えないことで心が破れるのを防ぐ抑圧的忘却という防御機能なのですが､それが相手への一途な恋心なだけにきゅんとする切なさです｡人は忘れることで前進できると言われますが､辛くとも一緒に進むことを決めた二人には全ての思い出が忘れることの無い大切なものとなるのでしょう｡DK時代の二人の甘酸っぱい馴れ初めも良きでした｡

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りんごももさん

(女性/－) 総レビュー数：15件

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