スモークブルーの雨のち晴れ
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スモークブルーの雨のち晴れ

波真田かもめ

古民家で織りなす男2人の時間

ネタバレ
2022年6月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 久慈の自宅は実在してる?と思うくらい細部まで描き込まれ、趣と風情があり、この良い味を出している古民家が、8年ぶりに再会した男2人の時間にリアル感を持たせています。一人在宅で翻訳業に携わる生活を送る久慈。どこかひっそりと陰のあるこの家に、人生小休止中だけども、元来の奔放な性格は健在の吾妻が出入りするようになり、家にも、久慈の生活にも、彩りがもたらされるようになります。この家で一緒に仕事をし、気が向けば抱き合い、これまでの思いを語る二人の全てに現実味がありました。私も彼らの年齢に近づきつつあるので、キャリアを投げ打ってでも立ち止まりたくなった吾妻の苦悩が心に沁みます。それから、縁側で二人並んでくつろぐ姿がこれまたすごく絵になる。短髪のバリバリエリート時代の二人がここに座ったら、違和感ありまくりだったでしょう。酸いも甘いも噛み分けた38歳の彼らだからこそ、とても自然にカチッとハマっていました。恋愛面も今後どう動いていくのか楽しみです。
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