蛇崩、交差点で
」のレビュー

蛇崩、交差点で

藤たまき

つたない恋を抒情的に。。(読みホから)

ネタバレ
2022年6月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 期間限定(8/31まで)読みホにて。
大事なことをネタバレしたレビューです。→→→

少年たちの拙い恋心が抒情的に綴られた切ないお話でした。
攻めくんがヘタレか!と思うほど長く大切に育てた恋がもどかしくも応援したくなる序盤から中盤。
その間、受けくんの影に曇る表情の理由が謎過ぎで、気になって迅る気持ちを抑えながら読んでいました。
そうね。HIV感染者の家族の気持ちって…ましてや多感な年頃だとアレルギーや嫌悪が先に立つかも知れない。
それと同時にいつ来てもおかしくない寿命の終わりを感じながら一緒にいる辛さとか。
字面では中々に表現のしがたい心情を、暗渠に蓋をした緑道、という比喩で見事に表現されています。
しかも地名がいいですね。
読後初めて航空写真で見ました。蛇行とはよく言ったもので緑色の蛇がくねっているようです。(緑道のすぐそばに住んでいたのにこんなに長い道とは知らず…)
暗渠→水→蛇→龍という連想。
流れ暴れ凪ぐ水←→憩い安らぎ安定感な木立、という対比。
一筋縄ではない複雑な思いが、すーっと入ってきました。
そんな複雑な気持ちの中で主人公たちと共に見た天の川の美しさと言ったら!
あの景色があったから終盤の会えない時間を読むのも、待てた気がします。
お話中の緑陰や星々、水面や雲や雨の表現がとても自然で、その中での2人が現実とお伽話の狭間で息づいているかのようでとても素敵でした。
各話の扉絵もタイトルもハイセンスでした。
修正は見えない構図です。
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