このレビューはネタバレを含みます▼
この作品を初めて読んだ時の衝撃は忘れられないです。紛れもない悲恋なのに、読後は全く悲しい気持ちになりませんでした。それは恐らく、数年後の合君が倉田との恋を笑い飛ばせるくらい大きく成長した姿を見せてくれたから。合君のこの姿は、倉田が本気で合君を愛していた証なのではないかなと思いました。結果として別れる事にはなったけれど、2人が共に過ごした日々で育んだ思いは本物で、合君は倉田からの愛をしっかり受け取っていたから、ちゃんと気持ちを整理できて前を向けたんじゃないかな。
正直なところ、倉田がしたことは、中学生くらいの男の子の純情を踏みにじる酷い行為だったと思います。しかし私のそんな個人的見解など些末なことのように思えるくらい、絵もストーリーも素晴らしく、ただただ美しいこの作品の世界に浸っていたい気持ちにさせられました。倉田の最後の島滞在と過去の思い出の回想、そして別れ。物語の最初から最後まで、本当に滑らかに流れていくようで、島の自然と一体となって全てはあるべきところに収まっていくように感じられました。
親切な方が、電子版配信に伴い省かれてしまった描き下ろしの内容をレビューに書いて下さっていて、大変ありがたかったです。倉田にそんな背景と思いがあったとは。電子版でもその描き下ろしを販売してくれないかなと期待しています。