真綿の檻【マイクロ】
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真綿の檻【マイクロ】

尾崎衣良

去年を思い出す

ネタバレ
2022年7月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 去年、過干渉だった母が亡くなった。
うちの母も、週末は家に居ないで遊び回る父と、商売をしている義父と、近隣に住まう小姑に挟まれ、6人家族の面倒を見ていた。
私は榛花のように有能な人間ではないし、家のことは「邪魔」と言われ、手伝わせてすらもらえなかったが、やはり親のレールの上で生きてきた。
母の入院中は、私が病院との行き来をし、私が行けない時は私の息子がその役を担ってくれた。
兄と弟は仕事を理由に連絡すらして来ず、弟に至っては金の心配と母が亡くなる恐怖で泣いて過ごしていた。
葬儀の段になって、私があれこれうごいていたら、急に弟が私にキレてしゃしゃり出て仕切り始めた。
兄は母宛ての手紙を用意し、棺に入れていた。
コロナ禍で家族葬だったので、親族や友人知人への連絡や、保険の切り替え、父や病院との必要なことの連絡、相続するものはないが遺産手続き等は全て私がやった。
その間、弟は私を罵倒し、形見分けの心配をしていた。
母は榛花の母ほど『何もない』人ではなく、美人で華があり、趣味と友人に囲まれ、無尽蔵の体力で100歳過ぎても生きると言われている人だった。
父は文化的な遊び人だったが、年を重ねてからは家のこともやるようになっていたから、榛花の父ほどは不安がない。
それでも、家の一切をやっていた母が亡くなり、気落ちする父は心配だし、お墓のことや親戚付き合いのことは発生する。
父の要望と兄と弟のスルーにより、必然的に私がその役を担うことになった。実家の墓についても、嫁いだ私や夫が行う。
そういった我が家の面倒の全てを、私のために承諾してくれている夫には感謝しかない。母の生前は、うちの夫も私の実家から『愚鈍で無能』扱いをされていた気がする。
実感として、親はどうとでもなるが、兄弟は駄目だな、と思う。このまま縁が切れてくれればいいのに、とも(特に弟)。
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