このレビューはネタバレを含みます▼
いっそ声がなかったら(7/21まで割引)で、吃音の主人公の苦悩を丁寧に描いた作家さんの新刊。
今回は、感受性が豊かで繊細なHSPさんのお話。
自分の持つ資質に振り回されてしまうけれど、仕事に誇りを持って取り組む主人公の思考や想いが丁寧に描かれています。
仕事や手紙のやり取りを通して知り合う2人一一一一
正反対な考え、気質でありながらお互いを理解し合う過程が
やはり、尊いです。
どちらの考えも誰もが持ち、自分でいい塩梅を探し模索しているのではないでしょうか。
何かしら感情移入してしまう要素が見つかるんじゃないかな。
忘れてしまう当たり前のこと=
一人ひとりが違う感覚を持っていること
を知り、お互いに理解を深めようとする………
大人になればなるほど、その大切さと難しさに気付かされます。
受がネガティブな自分を例えるのに、
ポジティブな人たちは鳥、明るい空の住人で、自分は暗い海底に漂うプランクトン。彼らは海底のゴミなんか気にしないし、そもそも空からゴミは見えない。自分はゴミばかり気にしている、と。
←その感覚が何だか分かるなぁ……と、
めっちゃ共感してしまいました‼︎
本作は仕事面やキャラ心情が丁寧に深掘りされ、
非常に読み応えがあります。
ラブ方面ですが、いっそ声がなかったらとは違い、致すのは無しでキスのみですので物足りなく感じる方もおられるのかな?
続編があったら見たいなぁ…とは思いましたが、これはこれで終わってもいいかもと個人的には気になりませんでした。
男同士、というより人間同士の付き合いに重きがあるので、エロお求めの方には向かないです。
受の自分の繊細さに振り回されながらも、他者への優しさがいつも基本にあるところ。
攻の八重歯と豪快な笑顔、実はすごく懐が深いところ。
両者のやり取りに、とても優しい温かい気持ちになれました。
(←因みに、攻受の判断は私の自己判断ww)
色々なことで悩み生きづらさを誰しも感じてしまうものですが、いっそ声がなかったらと本作品を通して、自分だけじゃないんだと励まされる人がきっといるんじゃないかな。
BL分野でそれを可能にするこの作家さん、今後の作品にも期待大です!