のこされた動物たち――福島第一原発20キロ圏内の記録
太田康介
ごめんよごめんよと謝りながら写真を撮った
ネタバレ
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カメラマン太田氏が震災直後3月下旬から3ヶ月合計17回、福島第一原発20キロ圏内へ通い動物達の保護活動を行った記録です。
震災当時、自分もテレビのニュースで取り残された動物達の映像を見ました。
飼い主の方達は、最初はすぐ帰れる、2、3日したら家へ帰れると思っていたとのこと。
あのコ達は一体どうなってしまうのか?
政府が主導して保護するのか?と気にはなったものの、自分の忙しさに忘れてしまっていました。
今回、飛鳥新社のセールで目にすることができ、どのような状況だったのか手元に残しておきたいと購入しました。
ボランティア団体や、自腹で保護活動をしている個人のボランティアの方々、このためにアルバイトをして東京から毎週通っているという方も。
ボランティアの方々が置いていくペットフードを食べられるコもいればそうでないコもいる。
痩せ細ったわんこを発見し餌を与えるも、なでてなでてと餌よりもスキンシップを求めてくるコ。
庭や犬小屋の中で息絶えているわんこ。
他の犬に噛まれ全身傷だらけで血で汚れ、しっぽも噛み切られ耳も千切れているコ。
厩舎や豚舎には、仲間の死体の中でなんとか生き残っている豚が数頭。
5月12日は原発20キロ圏内の家畜は全頭殺処分が発表され、個人で保護活動を続けていた方々の努力虚しく家畜達は処分対象となった。
放棄された牛舎では、異臭が立ち込める糞尿にまみれた仲間の死体を見ながら死んでいく牛。
誰かが解放した牛舎では、自由になった牛達が水を求めて用水路に落下。そのまま……
餌も貰えず餓死するこんな異常な事態が日本で起こった。
太田氏は、放っておいたらこのまま無かったことにされてしまうとの想いから、保護活動のかたわら撮影しブログへ投稿、それがこの本のきっかけに。
勇気を出して人間の懐へ飛び込んでくるコ、勇気を出せずに遠ざかるコ、これが助かるかどうかの運命を分けてしまうそうです。
警戒心の強いにゃんこには捕獲器をしかけて保護していたとか。
ペットという枠組みにはめられ、一緒に連れて行って貰えず取り残されてしまった命、家畜という枠組みにはめられあっけなく処分されてしまった命、10年以上も経ってこの事を知った自分はなんとのほほんと生きていることか……これが日本で起きた真実なのだと胸に刻みつけておきたい。
人間に翻弄されたたくさんの命の冥福を祈りたい。
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