俺を見て。【初回特典ペーパー/電子限定ペーパー付】【コミックス版】
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百瀬あん

百瀬先生の痛みの描き方が大好きです!

ネタバレ
2022年7月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読みホから。百瀬先生初期の作品が2つ入っています。
表題作がたまらなく好きです。
朔は、母親の歪んだ愛情に苦しんでいて、ゲイで、高校の時にズルい大人に抱かれていて、つらい失恋を経て、近所で噂になるくらい男遊びが激しい。
10年も大好きで見続けていたのに、そんな朔を全く解っていなかった京介の迂闊さが、すんごく痛いのです。
ボーっとした子として描かれていますが、一途に朔を思っていたにしては迂闊にもほどがあります。
大好きな人が知らないうちに色んな大勢の男に抱かれているなど、本来なら嫉妬と自責の念で気が狂ってしまいそうです。それも自業自得です。
この痛さがどーしようもないくらいにたまんないんです!!
せっかく両思いになれてもスッキリしない案件だと思うのですが、京介は頓着しないんですよね。
今現在の朔の気持ちだけが大事だという懐の深さを描いた、というよりも、痛みに耐えられない読者に忖度したような印象です。
6話完結150P弱では、もし京介を深掘りしたらとっ散らかるかもしれないのでこれはこれで良かったと思います。
そして受けの朔。
低評価レビューを拝見すると評判最悪ですねー。
攻めくんを翻弄するビッ チ、という印象なのでしょうか。
しかしこの朔、フィジカルはビ ッチなのに、メンタルはピュア過ぎです。
リアルに考えれば、憎からず思っている男子から心底好かれて告白されれば、たいていの人は過去なんか棚に上げて付き合っちゃうと思うんです。
そういうズルさはズルいにカウントしないで生きていると思うのです。(朔を捨てた元彼のようなのは世の中にうじゃうじゃ居るってことです)
それを朔は、自分は汚いからと突き放す。
数年後に受け入れる気になったのも、過去のゲス男と同じことをしたくない、京介を傷つけたくないという思いからです。
ビッ チなのにピュア。
しかも自分の傷はちっとも癒えていない。
このアンバランスさが作品全体の雰囲気を決定づけ、ハピエンなのに両手を挙げて喜べない微妙な読後感を出しています。
この微妙さは出そうと思って出せるものではなく、作家さまの持ち合わせたセンスだと思います。
この作品後、百瀬先生が数々のヒット作を出されているのも納得です。
修正は白抜きボカシ。
モブとのシーン有りです。
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