大正殉愛 金魚撩乱
」のレビュー

大正殉愛 金魚撩乱

岡本かの子/ヨシカズ

不自由な心の解放

ネタバレ
2022年7月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人により解釈が幾通りにも分かれそうな作品。
ひたすらに耽美だけど窮屈で狭い檻の中に閉じ込められて出るのを許されないような息苦しさを感じます。

真佐子も復一も辰也も皆それぞれの不自由さに捕らわれていて自由に焦がれ手に入れたいものを切望するけど手に入らないから別の人にそれを求める。

「純愛」ではなく「殉愛」なのも納得。
復一の恋情は最初は初恋からの執着で、大人になってからはまさに愛というより妄執というのがぴったりだと感じました。

真佐子が恋愛として想っているのは復一だけだろうけど、辰也と家庭をもち子をもったことで、変化は生じてるし、違う人生も進めて違う部分では満たされるものももっていてバランスを取ってる。
辰也も然り。

でも復一は捕らわれたまま。
解放されるには真佐子そのものの金魚を産み出すしかないと思い詰めてる。
でも東京に戻った時にどこかで気付いてるんですよね。
自分だけ捕らわれて取り残されていることに。
真佐子や辰也は復一への想いはもちつつもそれとは別に人生を進めていることに。
自分が自分を縛り付けていたことに。

もうとっくに金魚は完成していたと、池であの自然発生した金魚を見つけた時、やっとあの恋はとっくに終わっていてあとは妄執に過ぎなかったことをはっきり自覚したんじゃないでしょうか。
そしてやっと檻から解放された。

真佐子はあの金魚をもらって、やっと自分の不自由な心から解放されたんじゃないでしょうか。

やっと晴れやかに過ごせるんじゃないかな。
3人とも。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!