学校のこども
」のレビュー

学校のこども

下待迎子

こどもの秘密、秘密のこども

2022年8月15日
上下巻それぞれ約200ページ。
「こどもは秘密をかかえてる」というモノローグで始まる、イギリス風の女学院が舞台の群像劇。
少女達の団結の軛として旧女子寮の一部屋で育てられている少年という「秘密」を軸に、各話主役が交代する形で話が進行します。主役は主に少女ですが、教師と少年自身が主役の話もあり、それぞれに良かったです。「罪」も絡めて描かれたのも好み。
作中では、7年間の「秘密」の最初と最後の1年が描かれます。長くしようと思えば間の年を描くことでかなり長くもできた作品だと思いますが、あえてそれをしなかった潔さや良し。
息をひそめた感じはありますが、重苦しさは少なめ、終盤に出来過ぎ感はあるものの、閉じた扉が開いた時のさわやかさがあって悪くなかったです。そして庭師が良かった。少しおまけの星5つ。

こどもは秘密をかかえてる……「秘密」は学院というこどもだけの閉じた世界に「楽園」をもたらしたけれど、こどもは必ず成長するもの。危ういバランスの束の間の「楽園」という構図が魅力的でした。
まあ実際のところ、あんな風に人一人を隠し続けることは不可能だろうとは思いますが、重要なのは、女学院内に「秘密」が存在したという点だと思います。ロマン。
そして、クラシカルな制服デザインがとても好みです。
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