このレビューはネタバレを含みます▼
BLなんだけど、BLに納めるにはあまりに重たく、淀んだお話だと思う。敦也は洋二を被害者だと言ったが、遺族への対応とか心構えとか、加害者の家族としてあまりにも対応が表立っていると言うか。敦也を守ると意識した時から、そういったことへの償いを総て請け負う覚悟もしていたのか。遼一の影に隠れていたけど、結局は洋二が居るからこそ「水辺家」は持っていたのかもしれない。タイトルにもあるけど、本当は両親は早い段階から親としてのある種の面倒くささを放棄していたのではないか、と思わずにはいられない。風邪でもなんでも、病気になれば病院に連れてくのは親の判断が居る。いくらお手伝いさんが居たからといって勝手に連れてかないだろう。お手伝いさんが遼一の異質さを指摘しているなら、確実に親には伝わっているはず。世間に事件が明るみになって、遼一は何人試したか(年齢層、性別含め)によっては終身刑以上もしくは治療院から一生出てこれない可能性…そして先に述べた加害者家族を代表した物の言い方。帰国せずに金を出すだけ出して総てを洋二に投げたのではないか?そんな気がしてならない。もっと両親が早くに病院に行かしていれば、洋二も敦也も遼一も被害に遭わなかったのでは。でもそうすると、洋二も敦也も交わらない世界になっていたけど…他の遺族の方々は、遼一と洋二、敦也に何があったのか関係ない。ただ突然家族を奪われた悲しみに加害者側代表の洋二を責め立てるだろうし、洋二もそれは構わないと言っているが…本当に、洋二も被害者なのに。敦也が洋二に出会ってくれて本当によかった。「水辺家」という柵から解き放ってくれる敦也が、洋二を赦してくれて本当によかった。それでも、人は誰しも二面性があって、医療の介入なく子どものまま育ってしまった遼一がいつか、少しでも後悔する日が来ることが洋二への最大の償いになるのではないか。洋二と敦也が海に渡って穏やかな時を営めるよう、心から祈るばかりである。
◎灰汁を啜るのを厭わない系のお話が大好きな方はオススメです!