このレビューはネタバレを含みます▼
「一千文字」というレビュー枠に収まる作品ではない。それ程に圧倒的。ストーリーの枠組み、個々のキャラクター、従来の王道から外れた斬新さ、衝撃的なラスト。どれをとっても作者は魂削って描いたんだろうなと言わしめる作品。もはや芸術、アートの域。
主人公マコトの癖は究極のリョナグロ。そしてそれ故に自己嫌悪、鬱などの精神障害を併発し、最終手段として悪魔Jを召喚。臓物を食べさせてくれと願い、さらに食った部位を犯し、満足したことでJに魂を食われる筈でした。ところが、彼の奇才な部分を見抜いたJはマコトを悪魔として育てることとします。そこから数年間のマコトが描かれるのですが、私の想像を軽く超えるハードモード。悪魔からの半レ◯プシーンでは結局Jが助けに入るんだろ、という甘い予想は打ち砕かれます。悪魔の娼館で働くこととなったり、人間の魂を砂金にするシーンでは実の父親を引き当てられるなど通常の人間であればとっくに精神異常をきたす仕打ちをJ本人から受けてしまいます。
マコトとしては『自身の癖を受け入れてくれたたった一人の悪魔J』に信頼や愛情に近い感情を寄せていたわけですが、度重なる裏切り行為により、Jを激しく憎む様になっていきます。自分の感情も掴みきれないまま、マコトは『Jを超える悪魔になる』を目標に、周りの悪魔を全て踏みつけにしながらJを目指しました。そして物語に欠かせないのが『自分より上位の悪魔の名前を呼ぶことは叶わず、イニシャルでしか呼べない。それでも呼ぼうとすると、魂が砕ける』という設定。これが身震いする程面白かった。上位悪魔のやりとりは心理戦、かつ騙し合い。ラストシーンでのJとマコトの対話と作画、心理描写はコミックスという平面で表現できる作品の最骨頂だったと思います。『絶望』という言葉を体現したようなシーン、あれを描くのにどれだけの魂を捧げたのか、そんな衝撃を受けました。