ビューティフル・エブリデイ
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ビューティフル・エブリデイ

志村貴子

幽霊のお父さんが全体を俯瞰する

ネタバレ
2022年8月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 志村貴子先生の作品は、もうとにかく絵が素敵!!ストーリーも独特の魅力がありますが、絵から伝わってくる雰囲気が半端ないんですよね。上手く文章にできなくてもどかしいですが、多くの方に志村貴子ワールドを体験してほしいです。
この物語は、誰か一人の目線で1話がまとまっています。毎回交代する感じなので、みんなが何を考えているのかよく分かるんです。実際の会話は割と淡々とされていくのですが、裏にはその何倍ものモノローグがあり、それを読者は全部読める!お互いの関係性が非常にややこしいですが、隅々まで丁寧に読んでいけば全く問題なかったです。登場人物一人ひとりが、自分勝手に考えつつも相手を気遣い思い遣り、悩み苦しみながらも楽観的に前へ進んでいく。傷ついても致命傷にしないように自分で自分をフォローしている。ここに出てくる人達みんな、大人なようで子供だし、子供のようで大人だなと思いました。
あとこれだけは絶対書いておきたい。亡くなった花琳のお父さん!幽霊として登場しているのですが、彼がこの物語をとてつもなく引き立てているし、まとめ上げているし、深みを持たせていると思いました。退場する時の描写には、何とも言えない気持ちにさせられました。胸がキュッとなるような痛みの後には、その痛みが解けて消えていき、そこに光が灯るような。
あとがきに、花琳と光一がくっつく予定はなかったと書かれていて、読者からも「光一だけはやめておけ。思い直して花琳ちゃん!」という声が圧倒的だったそうです。みんな思うことは同じなんだなぁ。私も正にそう思っていました。でも、花琳がキュンとくるタイミングって、妙に説得力があるんですよね。彼女ならここでときめいちゃうだろうなと。花琳は父親大好きっ子なので、きっと光一には父と似たところがあるんだと思います。花琳は決め手は顔だと思っていますが、人がいいところは似ているなと思いました。
3巻という短さですが物足りなさとは無縁です。気楽に読み直せるし、読むたびに温かい気持ちになれるので、本当に買ってよかったと思っています。
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