きみはかわいい女の子
」のレビュー

きみはかわいい女の子

いちのへ瑠美

一人で立ててこそ支え合える

ネタバレ
2022年8月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 拗らせ卑屈女子の主人公が苦手なのですが、物語自体には惹かれるところがあり読み進めたところ、少女漫画で得られる読後感とは思えないくらい大満足できました。41歳にもなって高校生CPの少女漫画にこれほど夢中になれるとは思いませんでした。ツグミ父が43歳ですから、いつもなら保護者目線で読んじゃうんですけど、これは違った!!なんせマサムネがヤバい。こいつはタダモノではない。彼をフリーにして世に放てば多くの女達が泣きを見ることでしょう。無自覚だから余計厄介です。二人のファーストキスのシーンなんて不意打ち過ぎて、気付かず通り過ぎるほど。いやスゴイ。本当にスゴイ。このタイミングは無いわ~。ここで私の心は完全にマサムネに落ちました。その後も、ツグミに甘えるわ甘えるわ。その甘え方が何というか、子供が遠慮がちにお願いするみたいないじらしさがあるんですよね。タケがマサムネのことをさみしがりだと言った時、「こんなに人に囲まれている陽キャの典型のくせしてさみしがり?」と、何かあるんだろうなと思ったのですが、彼のさみしがりと甘えたがりの理由が後半明らかになります。
前半はツグミの、後半はマサムネの心のしこりを取り除く話になっていて、お互い支え合いながら自分自身の問題を乗り越えていく感じなのが、少女漫画にしては珍しいと思いました。特にマサムネはこの年齢で見守るという難易度の高い愛情表現をしてきて、それが分かるのが萩原さんとえんちゃんのターン。主人公CPから少し目線はズレる分、ツグミの人となりが伝わってくるので、読者もマサムネと共に見守りながら主人公を別な角度から捉えられます。清藤君も当て馬としての使い方が個性的でしたし、どのキャラも大切にしっかり描くことで、主人公の二人を様々な角度から切り込むことになり、自然と理解も深まって、感情移入が加速する感じでした。マサムネは割と最初からツグミに惹かれていて、それが不思議だったのですが、読み終わってみると納得できました。ツグミの卑屈さは清藤君の言う通りただの自意識過剰。だから時々驚くほど大胆な行動を起こせる。一方マサムネは注がれる愛を受け取り損ねていたので、基礎工事をしないで建てた家みたいに不安定。ここぞという時自分を信じられない。マサムネがツグミに憧れると言ったのも頷けます。番外編があるなら他キャラのその後じゃなくて、ツグミに甘えるマサムネがもっと見たいで~す。
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