鶴八鶴次郎
」のレビュー

鶴八鶴次郎

川口松太郎

昭和10年の直木賞受賞作品

ネタバレ
2022年9月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 短編が三作入っていて、最初に二作は直木賞受賞作です。とても面白かった。
どちらも想い合っている男女二人が致し方ない理由で別れることになって、その後どうなるか、という話です。

表題作の鶴八鶴次郎は、一度別れたけどふっついて結局別れるのだけど、それは一緒にいると女を不幸にしてしまうから、という理由で男がわざと喧嘩をふっかける。男のほうが苦労した分、成熟している感じ。

二作目は、家のために無理やり別れるがどうしても別れきれなくて、女が別の人に嫁入りにいく道中で、男が女が乗った人力車を奪い去る。その部分の描写は男の気持ちがあふれ出ててドキドキしました。

三作目は、役者と芸者の話で実話を元にした小説だそうです。
芸者は自分に惚れている田舎者から「最後に役者に金を貢いだら役者と別れて田舎者と嫁になる」と言って金を借りる。しかし役者とは別れず田舎者からも逃げ回ったあげく、芸者を血眼になって探す田舎者を殺し最後に自分も自死します。
典型的な流されやすい女ですが、作品の雰囲気として愛に準じた的扱いを感じて、ちょっとそれは違うんじゃないと思ってしまいました。
なので☆は一つ減らして4つですが、さすが直木賞に二作はとても面白かったです。
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